太宰治のおすすめランキング10選!代表作って知ってる?

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文豪の中でも人気が高いのが太宰治です。彼の作品の中でも有名な「走れメロス」や「人間失格」を読んだことがある方も多いと思います。

今回は太宰の代表作やおすすめの作品をランキング形式でご紹介します。あわせて作品の読みやすさを5段階で評価しています。

彼の作風についても解説しているので、参考にしてくださいね。

太宰治の作品の特徴

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太宰の作風を1言で表現するのは難しいです。先ほども触れましたが、「人間失格」のように暗い心を描いた作品もあれば、「走れメロス」のように明るい雰囲気のものもあります。

これは当時の太宰の心境と密接なかかわりがあります。彼の作品は大きく分けて前期・中期・後期の3期に分けることができるのです。

まず前期はまだ太宰が若いころで、自殺未遂を繰り返したり就職に失敗したり、大変な時期で、作品も安定していません

中期には井伏鱒二らの支えや、結婚があったからか、明るく優しい作風の小説を多く書いています。この頃に書かれたのが、「女生徒」や「富岳百景」といった代表作です。

後期には「斜陽」を発表し、一躍有名作家となりました。しかし、この頃は持病の結核が悪化し、第2次世界大戦の影響もあったのか「人間失格」などの作品も残しています。

こういった作風を指して「無頼派」と呼ばれることもありますね。 

太宰治のおすすめランキング10

10位:「HUMAN LOST」

よみやすさ:

ひとこと紹介

笑われて、笑われて、つよくなる。

あらすじ

精神科病院に強制入院された「私」は、周囲の患者たちに囲まれ気がめいっている。

日記を書き記すように物語をつづるが、内容は破綻している。

妻に対する愚痴、医者に対するののしり、哲学的な考察など、さまざまなことが書かれる。

最後はこれからの執筆活動の予定を書き、「私」は退院した。

解説

この小説はストーリーが非常にわかりにくいもので、すべての意味を拾うことは不可能です。

太宰自身が入院させられた体験をもとに書かれており、当時の心境を「狂っている主人公」に託して書いたもののように感じます。

太宰フリーク」でないと読むのがちょっとしんどいかもしれませんが、彼の代表作である人間失格」の原型になったと言われる小説です。太宰を語るには一読する必要があるでしょう。

9位:「あさましきもの」

よみやすさ:★★★★★

ひとこと紹介

あんな、せつなかったこと、ございませんでした、としんみり述懐して、行儀よく紅茶を一口すすった。 

あらすじ

3つの「あさましい」物語が紹介される。

ある男はたばこ屋の娘と固い禁酒の約束をした。あっけなく翌日には破ってしまったが、娘は「お芝居」だと信じようとしない。

娘の無垢な心に、男は言いようのないせつなさに襲われた。

ある女は大学生に言い寄るも、すげなくかわされてしまう。

「ここから三つ目のポストでキスをしよう」という大学生の言葉に、女は死ぬよりほかのない思いに襲われた。

ある男は罪を働き検事に取り調べられた。突然、せきにむせ返った男は、続けてからせきをこほん、こほんと2つ付け加えた。

それを見ていた検事に「ほんとうかね」と薄笑いをしながら言われたが、そのことが今になっても忘れられない。

解説

非常に短い物語で、すぐに読めてしまいます。

気づいた方も多いと思いますが、1番目と3番目の話は「人間失格」の中でも語られるストーリーです。

誰でも共感できる「あさましさ」が短い中に凝縮されていると思います。

8位:「御伽草子

よみやすさ:★★★

ひとこと紹介

みんな、嘘ばっかりついている。

そうしてさらに恐ろしい事は、その自分の嘘にご自身お気附きになっていない。

 解説

太宰が日本の昔話をアレンジして、再解釈を加えた物語。収録されているのは「こぶ取りじいさん」「浦島太郎」「カチカチ山」「舌切りすずめ」の4作品です。

話がバラバラなのであらすじは割愛しますが、ちょっと考えすぎともいえる太宰治の考えがふんだんに詰まった面白い作品です。

特に浦島太郎や舌切りすずめのおじいさんは太宰自身の心境を色濃く反映していると思います。

「少しでも経験がないと書けない」とこの作品の中でも語っていますが、太宰の作品には彼自身の投影がなされているのが大きな特徴ですね。

7位:「トカトントン

よみやすさ:★★★

ひとこと紹介

真の思想は、叡智よりも勇気を必要とするものです。

あらすじ

ある作家のもとに手紙が届いた。差出人の青年は、非常に困ったことがあり作家に相談したいのだという。

手紙の中には、何かをしようとすると、突然むなしい気持ちに襲われてしまい、何事もやる気が出なくなるということが書かれていた。

男が言うには、小説を書こうと思っても、絵を描こうと思っても、恋愛をしようと思っても、どこからともなく聞こえる「トカトントン」という音を聞くとばからしくなるというのだ。

苦悩の青年に対して、作家は一体どう答えるのか…?

 解説

太宰治のもとに手紙が届いたという体で書かれた、面白い作品。

何をしようとしてもやる気が起きない」というのは、誰にも思い当たる症状だと思います。

本作品では「トカトントン」というハンマーのリズムが印象的で、面白おかしく描かれていますが、青年の悩みは深刻なもの。

その悩みに対して、太宰はどんな答えを出しているのか。結末部分を味わってもらいたい小説です。

6位:「斜陽」

よみやすさ:★★

ひとこと紹介

不良とは、優しさの事ではないかしら。

あらすじ

戦後に没落した良家のかず子は、母と2人で伊豆の家で暮らし始める。父は亡くなり、戦争から戻ってきた弟は家から金を持ち出し遊びまわっていた。

弟の直治が師匠と尊敬する、上原に恋心を描いていたかず子であったが、母が徐々に弱り亡くなってしまい、弟の直治は自殺してしまう。

かず子にはもう上原の子供を産むことしか、生きがいがなくなってしまった。

やがて子供ができ、かず子は古い道徳と戦って生きることを決意する。

 解説

「斜陽」は戦後ベストセラーとなった小説です。上流階級が没落していく様子を描き、当時は「斜陽族」という流行語を生みだすほどでした。

現在の私たちが読んでも共感しにくい部分もありますが、何かにすがらなければ生きていけないかず子の姿は、万人の姿だと思います。

「斜陽」についての詳しい考察は、こちらの記事で紹介しています。

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5位:「女生徒」

よみやすさ:★★

ひとこと紹介

ことし、はじめて、キウリをたべる。キウリの青さから、夏が来る。

あらすじ

中学生の女の子が1日の心情を語る。

朝起きた時の面白い気持ち、亡くなった父親のことを思い出し悲しくなる気持ち、嫌な自分に気づいて沈んだ気持ちを語る。

また、友人や電車の中で見かけたおばさんにも嫌な気分になる。

そして、家ではおべっかを言う母を軽蔑しながらも、つらい中自分に優しいことを有り難く思う。さまざまなことを考えて、少女の1日は終わるのであった。

 解説

思春期の女子生徒の心情がぶちまけられたこの作品は、とりとめもない心情が羅列されています。

現代ならSNSでつぶやかれていそうな心情が、そのまま小説になったという形ですね。

特に女性は共感できる部分が多いと思いますが、男性にもぜひ読んでもらいたい作品です。

「女生徒」の解釈については、こちらの記事でも詳しく紹介しています!

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4位:「畜犬談」

よみやすさ:★★★★

ひとこと紹介

ゆるしてやろうよ。あいつには、罪がなかったんだぜ。

芸術家は、もともと弱い者の味方だったはずなんだ。

あらすじ

大の犬嫌いである「私」が甲府に引っ越すと、そこは犬だらけの街であった。戦々恐々としていたが、犬たちに愛想をふりまくことで難を逃れようとする。

しかし、なぜか犬に好かれてしまい、困惑する「私」。特にポチという犬がなついて家に住み着いてしまった。

あわれな様子のポチを見捨てられず、渋々面倒を見てやったが、「私」と妻は東京に帰ることになる。

ポチを置いていくことを決めた「私」だが、ポチがひどい皮膚病にかかってしまう。妻から「いっそポチを殺せ」と言われ、薬品を食べさせるが効かなかった。

最後には「もう許してやろうよ、東京に連れて行く」と「私」は妻を説得したのだった。

 解説

犬を極度に恐れる「私」ですが、なんだかんだ嫌いになり切れず、面倒をみてしまうのが面白い作品です。

あまり一般的には知られていない作品ですが、太宰らしさが出ている小説だと思います。

短い話ですぐに読めてしまうので、時間がない方にもおすすめの小説です。

3位:「走れメロス

よみやすさ:★★★★

ひとこと紹介

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

あらすじ

シラクサの街にやってきたメロスは、「人の心が分からぬ」と人民を殺す王に立ち向かう。

死ぬのは怖くないが、妹の結婚式を見ねば死んでも死にきれない。

親友のセリヌンティウスを身代わりに、メロスは村へと戻る。

妹の晴れ姿を見届けた後、幾多の苦難もものともせず、メロスは親友のもとへと駆ける。

メロスとセリヌンティウスの友情、人間の正直さに心打たれた王も「2人の仲間に入れてくれ」と改心するのであった。

解説

教科書にも載る物語なので、多くの方が読んだことがあると思います。

太宰といえば、「この世なんて…」と厭世的なことを言ってそうですが、実は「走れメロス」のように明るく、勇気づけられる作品も書いているんです。

大人になると「正義」などと語るのは気恥ずかしくなりますが、メロスの姿を忘れてはいけないように感じます。

あらすじや解説をもっと詳しく読みたい方はこちらも参考にしてください!

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2位:「グッド・バイ」

よみやすさ:★★★★

ひとこと紹介

「グッド・バイ。」

 とささやき、その声が自分でも意外に思ったくらい、いたわるような、あやまるような、優しい、哀調に似たものを帯びていた。

あらすじ

美男子の編集者、田島は闇商売にも手を出し、金をため込んでいた。彼は女好きでもあり、妻と子供がいるにもかかわらず愛人を何人も囲っている。

最近は気持ちに変化が起き、汚い商売から足を洗い、女関係も清算しようと考えた。しかし、変に女に律義な田島は、愛人たちときれいに分かれる方法がないか悩む。

そんな中、「飛び切りの美人を引き連れて愛人たちのもとを回っていく」という方法を考え、美人を探す田島。

以前仕事で知り合ったキヌ子に目を付け、彼女と共に愛人のもとを訪れるのだが…

解説

女性と別れるなら、何もそこまでしなくても…と思いますが、田島は真剣そのもの。

キヌ子という美人を見つけ、彼女を利用することを考えますが、逆にトンカツやら刺し身やら、ウナギやらをおごらされ、いいように扱われてしまいます。

そんな田島の様子が面白おかしい作品です。

太宰が亡くなってしまったため、「グッド・バイ」は未完の小説。

しかし、暗い側面はみじんも感じさせず、クスクス笑ってしまう内容になっています。

こちらで内容を詳しく紹介しています。

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1位:「人間失格

よみやすさ:★★

ひとこと紹介

恥の多い生涯を送って来ました。

あらすじ

葉蔵という人物の数奇な人生を描く。

幼いころから人間や幸福が分からなかった葉蔵は、常に人の顔色をうかがう「お道化」であった。

東京に出てからは酒や遊びを覚え、多少はずぶとくなるが、世間のことは依然として分からない。

大学にも行かず、女と無理心中しては自分だけ生き残ってしまう。別の女性とうまくいきそうにもなるが、幸福になることを恐れて、逃げてしまう。

そして最後は、薬物に溺れ、病院に強制入院させられてしまうのであった。自分でもどうしようもないほどに、葉蔵の人生は徐々に破滅へと向かっていく。

 解説

太宰治の代表作ともいえるのが「人間失格」です。

葉蔵の心情は、作中で「誇張している部分がある」と書かれているように、極端なものではあります。

しかし、「まさに自分のことを書いている」と感じるのは私だけではないと思います。

太宰の小説の特徴でもありますが、太宰の思いが色濃く反映された作品になっています。

私の人生の中でも、5本の指には入る名著ですね。詳しいあらすじと解説はこちらで紹介しています。

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おすすめ作品を表で整理

順位 作品名 読みやすさ(5段階評価)
10位 『HUMAN LOST』
9位 『あさましきもの』 ★★★★★
8位 御伽草子 ★★★
7位 トカトントン ★★★
6位 『斜陽』 ★★
5位 『女生徒』 ★★
4位 『畜犬談』 ★★★★
3位 走れメロス ★★★★
2位 『グッド・バイ』 ★★★★
1位 人間失格 ★★

上で紹介したタイトルと読みやすさを一覧表にまとめてみました。

人間失格」や「斜陽」は太宰の代表作で、味わいも深い作品なのですが、最初はちょっと手を出しにくいかもしれません。

「あまり読書に慣れていない」という方は、「グッド・バイ」や「トカトントン」など比較的短く、読みやすい小説から取り掛かるのがいいと思います。

先ほども触れましたが、太宰の作品には太宰本人の考えや体験が色濃く反映されています。

何冊か読むことで彼の考えをより深く理解できるので、複数冊読んで味わうのがおすすめです。

難しくても太宰の代表作に挑戦したい!という方は、「人間失格」と「斜陽」がまとめて収められているこの本もいいですよ。

おわりに

今回は太宰治のおすすめ小説をランキング形式で紹介しました。少し取り掛かりにくい作品もありますが、どれも「太宰らしさ」が出ていて面白いです。

まずは1冊、手に取ってみてくださいね。こちらでもおすすめの本を紹介しています!

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